『科学と価値』

ラリー・ラウダン『科学と価値―相対主義と実在論を論駁する』 *1を読んだ。科学理論といわゆる科学的方法、そして科学の目的(価値)との相関関係を論じている。訳者解説がノリノリで面白いので、一見の価値あり。ラウダンは、科学の理論と方法が科学の目的を…

道徳の可謬主義

実在論? 英米哲学系統のメタ倫理学においては「道徳的実在論」にはそれなりの支持者がいる。ただ、ここで「実在論」というとき、英米哲学の他の分野と同様、二通りの意味を区別するべきだろう: 道徳的命題に真偽がある(あるいはもっと弱く─道徳に関して合理…

超越論的論証・意味の全体論

一般論として「超越論的論証」というやつは疑わしい。しかし、大雑把に言って「僕の信念はほとんど正しい」という、このいっけん超傲慢、超独断的にみえる超越論的論証は正しい、少なくとも真剣に考慮するに値するように思われる。それはこういう議論である:…

逆転スペクトル人(2)

逆転スペクトル人の思考実験について気づいたことがあるのでメモ。まず、逆転スペクトル人の思考実験のあるバリエーションを考えてみることにする: この地球を離れたはるか彼方、宇宙のどこかに、この天の川銀河とそっくり同じ銀河があり、この太陽系とそっ…

逆転スペクトル人

ヒラリー・パトナム『心・身体・世界』で、逆転スペクトル人*1が現実的には不可能だということにこだわっているのが理解できなかった(例えば、247項)。この点について、ふと、少し理解できたように思う。たぶん、これはクオリア説というか、ヒュームやラッセ…

Network.HTTP と Codec.Text.IConv

原因を十分に特定できていないので、どこが問題かはっきりしないが、Network.HTTP や Codec.Text.IConv を使っていたら、次のような問題にぶち当たった。とりあえず、コード: module Friends where import Prelude hiding (print, putStr, putStrLn, getCont…

GHCと日本語・試行錯誤中

GHC(6.10.4)で日本語を気持ちよく使えるために試行錯誤している。まず、次のようにコードの先頭に書くと、ちょっと便利 import Prelude hiding (print, putStr, putStrLn) import System.IO.UTF8 data String' = S' String instance Show String' where show…

EUC-JPエンコードと戦う

webからhtmlデータをとってHaskellで解析しようとしたのだけど、対象のhtmlがEUC-JPエンコードでなかなかうまくいかない。仕方ないので、 wgetを使ったshellスクリプトをHaskellプログラムで吐き出す そのshellスクリプトをコンソールから起動して、ファイル…

[メモ] 三者三様(3)

これも僕が好きなジョークの改訂版:自動車を運転中、人をひいてしまったら、どうするか? 善人は、救急車と警察を呼ぶ。 悪人は、走り去る。 弁護士は、バックする。

三者三様 (2)

これは僕が考えたのではなくて、どこかで見たものの改訂版:あるソフトウェア企業が、新しいスタッフの募集を行った。応募した三人は、それぞれ、数学者、神学者、税理士だ。まずは、数学者から面接を開始。面接官は、「2+1はいくつですか?」と尋ねた。数学…

三者三様

技術者、弁護士、哲学者の三人がピクニックにいった。紅葉の森を散策し、小川を見下ろしながらの昼食は格別。ところが、帰るために自動車に乗り込んだ技術者が渋い顔をして言った。「くそっ、エンジンがかからない。ちょっと見てみるから、道具箱をとってく…

『キングダム』『ハチワンダイバー』『Moon』

『キングダム』16巻 - 王騎、死す。ドラゴン・ボール現象がやや心配。 『ハチワンダイバー』13巻 - 澄野に軽く圧勝する女登場(将棋で)! 文字山が果てしなくウザい。でも、そこが文字山。 『Moon』4巻 - ミンミンが、かわいい。はげしく可愛い。スバルは相変…

脳の不可逆的機能停止について

いろいろ考えがまとまらないところがあるけど、僕はいまのところ次のように考えている。まず、「脳死」という問題がどういう問題かについて。問題のひとつの原因は、人の死という概念が曖昧なことにある。もしかしたら、すべての概念、少なくとも「抽象的な…

クーンの「パラダイム」とクワインの全体論

この雑記の記事は、しばしば、あるいは常にそうだけど、記憶に頼って必ずしも正確に理解している自信のないことを書くので、あまり信用しないこと。 さて、クーンのパラダイム論は、二つの異なるパラダイムの間では通約不能あるいは比較不能であるとする。こ…

doJust

こういう関数も欲しい: module Scrach where doJust :: Maybe (IO a) -> IO () doJust (Just io) = io >> return () doJust Nothing = return ()*Scrach> doJust (Just $ print "doing") "doing" *Scrach> doJust Nothing *Scrach> 僕が出した答えはこのすぐ…

whenJust

以前のエントリで、(つづく)とか書いたけど、続きませんでした。ごめんなさい。さて、つぎのような関数が欲しい: module Scrach where whenJust :: Maybe a -> (a -> IO b) -> IO() whenJust (Just v) io = io v >> return () whenJust Nothing _ = return (…

FizzBuzz

Arrowを使いまくる形に変形しようと思ったんだけど、なんか、非本質的なところであまりに苦労しているので、変形前のFizzBuzz関数: module Main where import Control.Arrow fizzbuzz :: [(Int, String)] -> [Int] -> [String] fizzbuzz = map . step step :…

Control.Arrow (3)

http://d.hatena.ne.jp/mzsms/20091120/1258666488 のつづき。 fizzbuzz関数 (|||)の使いどころが分からなかったので、次のような関数を書いてみた: Prelude> :l FizzBuzz.hs [1 of 1] Compiling FizzBuzz ( FizzBuzz.hs, interpreted ) Ok, modules loaded:…

Control.Arrow (2)

http://d.hatena.ne.jp/mzsms/20091119/1258657366 のつづき。 階乗 このエントリ全体がそうですが、この節はとくに、http://d.hatena.ne.jp/takkan_m/20070905/1189001272 を参考にしました。ここまでの道具立てで、階乗関数が書けるので、階乗関数を書いて…

Control.Arrow

http://www.nicovideo.jp/watch/sm5103132 で、Haskell(というかGHC?)のControl.Arrowに関心を持ったので、すこしいじってみた。 loop その1 まず、理解が難しいloopから。なぜなら、どうもArrowを使うときにはトップダウンで考えないとわけが分からなくなる…

実在・道徳

今日、一日、次のような考え方を考えてみていた:まず、手で変形させられる、叩けば音がするなどなどといったことの他に、それとは別に、「実在する」といった性質、状態、あるいはその他の何かがあるわけではない。こういったからといって、日常的な五感で…

親鸞のダークサイド

僕は死後の魂を信じていないし、西方浄土も、阿弥陀仏の本願も信じていない。なので、親鸞の教説に従いはしない。しかし、それでも、日本人で最大の思想家は誰かといわれれば、僕の知る限りは親鸞だと答えるし、無人島に持っていく本はと聞かれれば、そのナ…

萌える高僧伝

最澄 - 委員長兼図書委員。メガネ。クラスのほとんどから信望を集めているのだが、苦労性で、ときどき老けてみえる。クラス対抗ソフトボール大会では、二番でキャッチャー。事実上の監督も兼ねる。 空海 - 天真爛漫、成績優秀、学問・芸術・スポーツなんでも…

実在

リチャード・ローティが次のような話を紹介していたように思う。しかし、記憶が定かではないこともあって、僕が自由に脚色して、架空の例として書く。ある物理学者が、存在論的相対主義者、反実在論者と論争し、ついにテーブルをドンドン叩きながら、「この…

ディヴィドソン

何度読み返しても十分に分かった気がしない、ディヴィドソン。また、ひとつ、こう理解してはどうだろうか、というのが思いついた。まず、直示の意味論、存在論、真理論というのを考える。つまり、語の意味の原型とは、「○○とは、それのこと」と指差して教え…

霊性

『禅入門―カトリック修道女の歩んだ道』*1を読んだ。気になる章からあちらこちらという読み方なので、通読していないけど。カトリックの修道女である著者が、禅の入門的解説と勧誘として、禅の霊性(「東洋的霊性」という言い方もしている)の説明を行ってい…

『現代唯名論の構築』

10月20日のエントリ「『現代唯名論の構築』」の一部書き直し。 数学的な語りはどこに? 中山康雄『現代唯名論の構築』で疑問に思ったことのひとつが、応用が見出されていないような数学分野の理論はどうなるのだろう? ということだ*1。例えば、直感的には奇…

でかい話

かなり大つかみで、でかい視野からの僕の思想的(?)態度。 超自然的な道徳的因果の否定 - 僕は無神論者だけど、それはどちらかといえば、これのコロラリーにすぎない。「超自然的な道徳的因果の否定」というのはたぶん僕の造語?で、その正確な内容にきち…

『昴』と『ピアノの森』

なぜか立て続けに芸術マンガを二つ、既刊全巻(たぶん)読んだ。バレエまんが『昴』とクラシック・ピアノまんが『ピアノの森』。『昴』はすごく面白いのだけど… 第一期?の最終巻(11巻)は、正直、引いた。もはや、芸術の天才を描くマンガとしては破綻して…

志向性

言語における指示、つまり、ある発話のある単語が何かを指示するということは、言語の使用の一種なのであって、他のさまざまな言語によるコミュニケーション、命令、懇願、求愛、挑発、侮辱と同じように失敗したり、成功したりする、という考え方は理解でき…