カント

いまカントの書籍が手元にないのではげしくうろ覚えだが、カントは、自分の才能を伸ばすことを不完全義務としてあげていたように思う。

しかし、ここでいう「才能」とはいったいどんな才能なんだろう。カントによれば、自分の楽しみのために絵を描くとか、他人の楽しみのために歌を歌うとかはいうことは、道徳的ではない(仮に悪ではないとしても、善ではない)。

そうすると、そういう善ではない行動を行うための才能を伸ばすことも、道徳的善なのだろうか? 仮に強く善なる行動だけを選択するように行動しようとしたら、絶対に行わないような行動のための才能を伸ばすことが善なのだろうか? それとも、自分の才能を伸ばすために、ただそれだけのために絵を描いたり、歌を歌ったりするべきなのだろうか? いずれにせよ、かなり空しい「才能」の練磨といえるだろう。