戦争の原因

戦争の原因というのは、一般論としても、各論としてもよく分からない。なぜ第二次大戦は始まったのか? ドイツの「突然」*1の進行から始まった。では、ドイツはなぜ突然進行を始めたのか? ベルサイユ体制の打破? ブロック経済の打破? アメリカの南北戦争は?

戦争、あるいは軍事侵攻というのも、一種の政策決定なのであり、そこには本当に多種多様な帰結とその予測があって、それらを総合的に判断して、またさまざまな勢力の思惑があり、それらの複雑な力学によって最終的な政策が決定されるので、他の政策決定と同様、唯一の理由や原因を探すほうが愚かなのだろう。

ただ、最終的に政策決定を下す集団の思惑というのはもちろんあり、それはもっとも単純にいえば「勝てると思ったから」ではないかと思う。戦争とは、ある面でいえば、政府の不稼動資産の償却であって、もし短期的に勝てるのであれば、追加投資は必要ない*2。いくらか追加投資が必要であって、ある程度までは、社会全体の休眠資本を稼動させ、好景気をもたらし、政府の歳入をむしろ上昇させる。だから、戦争ないしは軍事侵攻は追加費用が必要ないのであって、その利益がわずかであっても、短期に勝てるのならばやったほうが良いのだ。

しかし、もちろん、侵攻される側はそんな経済事情とは関係なく抵抗する。

そして、実は、政府の不稼動資産の償却と社会の休眠資本の稼動をさせたいのは他の国々も同じであるから、そろそろこの戦争は終了するなと予測したタイミングで、不稼動資産の償却と不眠資本の稼動をさせるべく参戦してくる。こうして、戦争の終了は次々と引き伸ばされるから、はじめに勝てると思って戦争を開始した側の予測ははずれ、資本の無理な追加投資を必要とするようになり疲弊する。

だから、戦争は、すぐに終結するという甘い予測を持った軍事侵攻によって開始され、一番最後に勝ち馬にのった国に利益をもたらして終了することになる。

…ということを考えてみたが、信用しないように。

*1:この括弧は強調ではなく、留保。

*2:ここでは、人命は無視するか、単なる交換可能な資産だとみなす。