農耕神

農耕民族において、農耕そのもの、あるいは豊作そのものをダイレクトに司る神、神意が生活上最も重要な神であるはずだと思うのだが、そのものズバリの農耕神が大活躍する神話というのは少ないように思う。

オオゲツヒメは、たぶん日本神話においてもっとも有名な五穀の神だが、鼻や口、尻(つまり肛門だろう)から五穀を出して食事として提供しようとして、もっともな怒り*1をかい、切り殺されるという役回りだ。

オオクニヌシも農耕神の一種だろうが、古く偉大な神であるものの、神話によって語られる「現在の秩序」からみれば、不遇であり、屈折した立場に置かれている。

デーメーテールも農耕神であり、ティーターン神族、ゼウスの姉にして、かつオリュンポス十二神の一柱と、いちおう格は高い。しかし、娘が誘拐され、その娘を探して放浪するが、他の神々の横槍もあり結局は救出できないという神話から、最高位の神に列するもののその力や権威は強くはない、という印象を受ける。

農耕神は、何ゆえにこのように不遇なのだろうか。

*1:まぁ、殺されるほどかといわれれば、躊躇するが。