「自分の意見が常に正しいと思っているのか?」

自分の信念が常に間違っていないと考えている人は、狂人である。つまり、「自分が持っている信念が全て正しい」という一般的なメタ信念を持っている人は、正気だとは思えない。

しかし、自分が持っている個々の信念のどれについても「その信念は正しい」という個別的なメタ信念を持っているはずではある。もし、そうでなければ、それを本当に信じているのではなく、それは信念ではないのだ。この原理を否定する人は、たぶん、「自分が持っている信念が全て正しい」というメタ信念を持っている狂人と、ほとんど同じところにいることになる。その人は、自分は本当に何の信念も持っていないと考えているわけだが、それはたぶん、自分の信念の全てについてそれを端的に事実だと信じているだけだろう。

以上は、理屈としては非常にクリアだと思う。

しかし、実際の心理としては、必ずしもこうではないだろう。そもそも、信じるという命題的態度は、程度を付しうるものである。それが間違っていることを想像もできないというところから、まず間違いないだろう、たぶん間違いがないだろう、よく分からないがこれより有望な対抗馬はいまのところ思いつかない、というところまで。

そして、自分の信念の正しさに対する一般的なメタ信念の程度が高い人は、個別的なメタ信念も揺るぎにくいし、ひいては個別的なそれぞれの信念も揺るぎにくいだろうし、一般的なメタ信念が極めて低い人は、個別的なメタ信念も揺るぎやすいし、ひいては個別的なそれぞれの信念も揺るぎやすいだろう。これが、実際の心理だと思う。