「アメリカのやりかた」

米国の立法(議会)・司法(裁判所)の両方にまたがり,明文化されたルールと明文化はされていない慣習の両方にまたがって現れている重要な原理として,「どのような人であれ,どのような意見であれ,自分の意見を主張することは許されなければならない」という原理があるように思う。


また,この原理とは少しずれた話かもしれないが,以前観たVTRの黒人の男性ミュージシャンの回想が印象に残っている。

黒人の公民権運動が華やかりしころ,白人による「改革」反対運動も行われた。その中で,その黒人ミュージシャンは車に乗って,キング牧師の講演に反対するデモか何かに遭遇した。タイミングの悪いことに恋人である白人女性と一緒だった。彼らが乗る車を見つけた白人の若者たちは,「ニガーが白人の女に手を出しやがってっ!」と,彼を車から引きずり出し暴行を加えようとした。

それをデモに参加していた白人の男性が止めた。曰く,「それはアメリカのやりかたではない」。彼は,もちろん,黒人の公民権拡大に反対するためにデモに参加していたのだが。

回想していた黒人ミュージシャンは,「実にすばらしい。アメリカに生まれてよかった」と,若者を制止した白人男性を,爆笑しながらではあったものの激しく賞賛していた。


僕は,以前,これはむしろ皮肉的なジョーク,若者を制止しようとした男性を揶揄するジュークなのか,それとも回想者は真剣に賞賛していたのか,よく分からなかった。しかし,今は,僕は若者を制止した白人男性の行動は実にアメリカ的であり,また賞賛に値する行動だと思う。そして,回想していた黒人ミュージシャンも真剣に賞賛していたのだと,理解している。